有限会社ジャクルス
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患者様も、眼科医も、指導医もみんなハッピーな『白内障手術教育=カートンシステム』




 *ラベルが『Karton−N』と記載された少し粘稠な赤褐色の試薬です。(ビデオ・CD参照)
実験中に、万一、手に付いたり、皮膚に付いたりしても安全です。水と反応して自然に硬化する多糖類を主成分としたゲル化剤です。しかし、引火性がありますので、実験中は絶対に喫煙しないで下さい。また、周囲の火気にもご用心下さい。



● 目的:白内障超音波乳化吸引手術で、様々な硬度の白内障眼核を想定した、
水 晶 体 核 処 置 の練習に使用します。

● 実験のながれ:
  無処置豚眼に対しCCCを施行⇒PEA装置にて水晶体内容物除去⇒IOL挿入時の粘弾性物質注入の代わりに試薬『Karton−N』を注入⇒10分以上の放置でゲル化した模擬核を形成⇒人眼核の代替として練習する。
  (尚、中から上級者用の灌流装置を用いたゲル化法もあります。)
  
                     
●使用方法:  
 @ まず、約0.5mlの水晶体試薬『Karton−N』を、25Gか27G注入用鈍針付き1.0mlディスポシリンジに、吸い上げておいてください。(泡を立てすぎますと、一回使用量が不正確になりやすく、 また、ゲル化剤が不均一に注入される原因にもなります。あまり泡を立てすぎないようにして下さい。)

A 次に、無処置の豚眼を、発泡スチ−ル製などの固定台上にマチ針等で固定します。
その後、固定された豚眼の2時〜3時の位置と、10時〜9時の位置の輪部を、槍状刀にて穿刺し、2個所のサイドポ−トを作成します。次に、ヒアルロン酸ナトリウム(或いはこれに類似する粘弾性物質、以下同じ)を前房内に注入し、前房を確保します。

B −A:針によるCCCを希望される方は、どちらかのサイドポ−トから、予め曲げておいた柄つき25Gディスポ針を前房中に挿入し、やや小さめの直径をもつCCCを作成しておきます。

−B:稲村前嚢摂子等の摂子によるCCCを希望される方は、手前12時の位置で、角膜輪部を3.0〜3.2mm幅ランツェ型角膜穿刀(超音波チップ挿入可能サイズ幅を持つ穿刺刀の事です。)にて穿破し、再び、ヒアルロン酸ナトリウムを前房内に注入し、前房を確保します。そののち、前述の前嚢摂子を前房中に挿入し、やや小さめの直径をもつCCCを作成しておきます。

注意 やや小さめの直径を持つCCCを作成する事が、後の練習には大変重要です。
  目的とする直径のCCCが、うまくできるようになるには、前述の『Karton−Cを用いたCCC練習方法』をマスタ−しておく事が大切です。
  また、出来ましたら、針でも前嚢摂子でも、どちらでもCCCが上手にできるように練習しておいて下さい。両方の術式をマスタ−しておくことは、人眼の白内障手術の際に大変役に立ちます。

C 次に、PEAの手順で無処置豚眼の柔らかい水晶体嚢内物質を吸引除去しておきます。
   提供される豚眼は、生後半年くらいの豚から摘出されたものですから、人眼のような核形成が殆ど認められません。(ビデオ参照) 


  超音波を用いないで吸引操作だけでも本操作は可能ですが、すこし超音波を掛けますと能率良く作業を進めることができます。しかも、豚眼の前嚢、後嚢は、強靱ですので超音波チップ先端が嚢に接触しても破嚢する事は滅多にありません。しかし、人眼では、即、破嚢につながりますので、この操作では、『手を荒くしない』ように気をつけて下さい

D さて水晶体内が空虚なった時点で、再び、ヒアルロン酸ナトリウムを前房内に注入します。今度は、虹彩上面にド−ナッツ状に展開して、前房が虚脱しないようにします。又、処置Eを考えて瞳孔領〜水晶体嚢内へは出来るだけ注入しないようにします。

E 上記Dで前房内が確保された時点で、今度はサイドポ−トを通じて、瞳孔領から水晶体嚢内へ試薬『Karton−N』を注入していきます。(ビデオ・CD参照)


  先ず、前嚢縁から後嚢赤道部へ掛けて、試薬『Karton−N』を、徐々に注入して行きます。水晶体嚢はBSSだけで保持されていますので、嚢はややもするとその膨らみを失い、後嚢の位置は浅くなっていますので、注入針の先端で、前嚢片を少し挙上気味にして、後嚢破損しないように気をつけて下さい。
  ビデオでは、嚢は殆ど膨らんでおらず、後嚢は前嚢縁直下まで迫っており、鈍針はその境界部分から注入を開始していっています。このように後嚢の位置をキチンと視認し、後嚢を破嚢しないように注意することが、人眼白内障の手術でも要求されます。(ビデオ・CD参照)
  試薬『Karton−N』を注入して行くにつれて、嚢内は拡張し、試薬は少しずつ赤道部へと注入されて行きますが、それと同時に、後嚢は後極側へ下がりますので、注入が容易になってきます。
  理想通りに注入されますと、まずド−ナツ型にKarton−Nが拡がっていき、最後に中央部の透明な前嚢CCC切除部分に盛り上がってくるようになります。ここには、処置Dで注入したヒアルロン酸ナトリウムが虹彩上より嚢内へこぼれ落ちております。
  これを排除するように、Karton−Nを注入していきますが、ある程度注入されましたら、それ以上は前房側へ流出してきますので、その時点で試薬『Karton−N』の注入は中止、鈍針を抜去します。(注入量は0.5ml程度が最大量です)

  このEの操作は、ビデオをみていますと、とても簡単に出来るように見えますが、初めて実験する人にとってはやや難しいかも知れません。実際、開発者の私たちや協力者の方々も、試薬Karton−Nが前房内へ逸脱し失敗したこともありました。しかし、数回練習を繰り返していく内に、ビデオ・CDの様に試薬Karton−Nをバッグ内に十分量注入できるようになりますので、『短気は損気』と思い、上手に出来るように乗り越えて下さい。

F 上手に出来ますと、ヒアルロン酸ナトリウムで前房が維持され、虚脱しないでゲル化時間を待てます。しかし、前房が虚脱するようなら、すぐにヒアルロン酸ナトリウム等を前房中に注入置換し、前房を維持し、角膜内皮とゲル化剤が接触しないようにして、そのまま放置してゲル化させます。

注意 この際も、注入に使用した鈍針は、抜去後、鈍針がゲル化剤でつまらないように通気して置いて下さい。
注意 この時間と操作が、堅い疑似核を得るためにとても重要で、10分以上硬化時間をかけておけば、かなり堅い疑似核を得ることができます。30分も放置するとかなり堅い模擬核が豚眼嚢内にできています。ビデオでははじめの模擬核は30分近く放置していますので、核分割が困難なくらい堅くなっています。(ビデオ・CD参照)

G さあ、やっと核処理の練習をする為の『人眼様模擬白内障核』を得ることができました。
  ここまでのゲル化する時間の間に、他の豚眼を用いて順次練習すれば、時間の節約ができます。 

  柔らかい核から堅い核迄、硬さが様々な白内障様疑似核眼を得るには、上述の混和状態、硬化時間、使用するゲル化剤の特性などを、きちんと把握して、調整すれば可能です。
  このようにして形成された白内障様疑似核眼を用いて、人眼の白内障超音波乳化吸引手術の練習ができます。核は堅いですので、D&Cのトレンチ掘りもできます。
  疑似核を立体的に掘り、スパ−テルを使用して二分割。核が回転可能ならば、スパ−テルとPEAチップを用いて、疑似核を回転させ、更に四分割してみても良いでしょう。フェイコチョップの使用を試みられても楽しいかもしれません。核回転時に、小さく分割されてしまい勝ちな核小片を丁寧に、乳化吸引する事も大切です。後嚢の位置を立体的に視認しながら、こうした一連の操作を何回も練習して下さい。(ビデオでは、最初は分割スパ−テル、後の例ではチョッパ−を使用した実験を供覧しています。)

H 今日、臨床的に遭遇する白内障眼は、以前のように硬度4度、5度は少なく、むしろ、比較的柔らかい核が多くなっています。これを『白内障は若くなった』と、言いますが、時間をかけて堅い疑似核を作成して、チュ−ブを詰まらしながら練習することよりも、比較的柔らかい疑似核で、虹彩や、前嚢片、後嚢の位置を確認しながら、核小片を丁寧に、乳化吸引、除去する事の方が重要かと思います。
  人眼でもそうですが、核硬度4〜5度の核では、PEAの吸引チュ−ブが閉塞しやすく、手術操作が中断する最大の原因になっています。(2回以上詰まりますと手術それ自体がイヤになってくる程です。)。乳化吸引操作で破砕された核小片が、チュ−ブ内の細い個所や、まがった部位で詰まることが原因と考えられます。ちなみに、機械本体にチュ−ブが接続しているT字部分がよく詰まります。
  『Karton−N』でも、30分以上ゲル化した場合、硬度4〜5になり勝ちですので、チュ−ブが詰まりやすくなって来ます。(ビデオ・CD参照)

I 幸い、豚眼の後嚢は人眼の後嚢より強靱ですので、滅多なことでは破嚢はしません。
 豚眼水晶体嚢内で硬化した『Karton−N』を、上述のように乳化吸引、除去した後、豚眼水晶体組織が健全でしたら、操作Hから以降に述べた、一連の超音波乳化吸引手術の操作が練習することが可能に見えます。しかし、嚢自体がKarton−Nの化学作用で収縮しており、嚢が膨らみにくく困難になってきますので、確実な練習のためには、一回限りの使用が勧められます。

J 上記の『Karton−C』、『Karton−N』を用いた一連の手術操作を、難なくこなせるようになりましたら、次の段階を目指しましょう。